でいりいおくじょの

鹿児島の枕崎に鰹節を作りに行った話

もうかれこれ20年以上前になりますが
鹿児島の枕崎に
かつお節を作らせてもらいに行ったことがあるんです。

私の家庭料理研究家の原点ともいえる
「もっと使える乾物の本」(農文協)
を書いた後
改めて初心に返り
乾物の生産現場にこつこつと足を運んで
実際に乾物が作られる所を見て回っていたのです。

かつお節作りは
まず、朝の競りから始まります。
独特のセリの言葉と抑揚があふれる現場で
カツオが次々に競り落とされ
各々作業場に運ばれます

そこでカツオの解体作業が行われるのです。

頭を落とし、内臓を出して
それから三枚おろしにするのですが
普通の魚のように、まな板の上に寝かしておろすのではなく
片方の手で尻尾をもって持ち上げ
持ち上げたまま、下ろしていくのです。

それを、どうしてもやらしてもらいたくてお願いしたら
カツオを左手だけで持ち上げることができるか?
と聞かれ

カツオ1尾って5キロくらいあるから
片手で持ち上げるのは、かなり厳しく
まして、それを持ち上げた状態で
もう片方の手に持った包丁で身を切らないといけないわけですから
どう考えても無理だと言われたんです。

実際、かつおの解体をやっておられたのは
全員男性でした。

でも、そこで引き下がるわけにはいきません。

どうにかして、片手で持ち上げる方法はないものかと考え
一つの方法を編み出しました。

片手で持ち上げたカツオを
お腹で支えて
そうして、もう片方の手で包丁を使って下ろしていくのです

そうして3枚におろした後
片身を腹と背に分け、5枚おろし完了です。

体中、かつおの体液と内臓まみれになって、奮闘しました
今思い出しても
かなり頑張りました。

切り分けられた身はゆでられ
小骨などをとったりして、きれいに掃除されてから
燻されます

いわゆるスモークです。
真っ黒になって出てきたのを
職人さんの手によって形を整えられ
そこから、かびつけになります。

言葉で書くと
なんかザーッと流れ作業で行われるように思えるかもしれませんが
ここまでも何日もかかる大変な作業です。

そしてさらに
ここからカビづけという工程に入ります

かつお節って、
乾物なんだけれど
カビの菌の力で熟成させていくので
発酵食品でもあるんです。
味噌とか、醤油とかと似ています。

なんでカビをつけるかと言うと

カビって菌だから胞子を伸ばして
カツオの内部まで入り込み
中の水分を栄養分(脂など)を吸ってくれるから
からからに枯れさせることができるのです。
水分と養分を抜きつつ
独特の風味と旨味を生み出す
ほら、まさに、味噌、醤油、あるいはチーズ、みたいな感じ。

かつお節って
いわゆる干物とは違うのです。
だから、めちゃめちゃ面白いのです。

かびつけしたかつお節を枯れ節って言うんだけれど
そのネーミングもい言えて妙です。

かつお節にしっかりカビがついたら
それをいったんきれいに掃除して
またカビをつける
というのを繰り返し

1番カビ、2番カビ、3番カビという風に
繰り返していくうちに
どんどん固くなり、旨味も増していきます。

昔は、そうやって手間暇をかけて
極上のかつお節を作っておられたそうですが

私が、伺った20年以上前の
あの時点で、もう、そこまで何回もカビを付けることは
ほとんどないとおっしゃっていました。

あのころすでに
かつお節作りも、
職人さんが作るものだけでなく
工場で作られているものも多くありました。

あれから20年以上たったから
今、かつお節作りはどうなっているのか分かりません。

私がお世話になった、かつお節作りをされているおうちでも
跡継ぎ問題が深刻化していました。

日本中の家で
1年に一本かつお節を使ってもらえたら
自分たちは暮らしていける
とおっしゃっていた言葉が、今でも耳に残っています。

そんなわけで
あれから、ますますかつお節が大好きになりまして
もっともっと、普通の家庭で
かつお節を使ってもらいたいなと思い続けています。

出汁をとって、こした後のかつお節を捨ててしまうのではなく
かつお節を入れたら
そのままかつお節も食べてしまうという方法を考えたのも
もっと大事に食べたいと思ったからです。

私がブシブシと読んでいるこの方法は

かつお節を作って下さっている方と
カツオたちに対するリスペクトです。

ブシブシなら
むずかしいことは何もなく
本格的なかつおの旨味を楽しむことができ
また、かつおを全部おいしく食べられます。

もっともっと
このやり方が広まっていったらいいなと思っています。

コメント

  • 甘利京子 より:

    「だし」こだわっています
    以前岡山に住んでいた時「だし三昧」という
    かつおぶし・さばぶし・昆布・しいたけをブレンドしただしを扱っている乾物屋があり、
    今でもそこから取り寄せています
    みそ汁には「だし三昧」を使い、だしごと食べていますが
    煮ものには小豆島の粉末だしを使っています
    こちらは友人が送ってくれます
    だしがおいしいと食材も一段とおいしく感じられます

  • るりまつり より:

    5キロの鰹を持ったままさばく?!
    しかもお腹で支える?想像したらめちゃくちゃ怖い😆、、、私がやったら切腹になりそう💦
    茹でで燻して何度もカビづけ、そして発酵、いやはやすごいなあ。
    先生の鰹節愛はそこが源点なんですね。それにしてもすごいです。
    私も子供の頃から鰹節が大好きです。
    昔、実家には、木製の鰹節削りがあってシュッコシュッコと鰹節を削る音も香りも大好きだった。
    その引き出しから削られた鰹節が出て来る時のワクワク感を今も覚えています。
    ブシブシ愛❤️私もかなりです☺️

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